2014年1月19日日曜日

世界の貧困についての 3 つの都市伝説 by Bill & Melinda Gates [翻訳]

(原文は "Three Myths on the World's Poor")

どのような基準で見ても、世界は今までのどの時代よりも豊かになっている。極度の貧困はここ 25 年で半分に減ったし、子供の死亡率は急落しているし、海外からの援助に依存していた多くの国は今や自給自足できている。

それなのに、世の中は悪くなっていると考える人が多いのはなぜだろう? 多くの人々が、世界の貧困と開発についての 3 つの有害な都市伝説に捉われているからだ。都市伝説に騙されないように!

都市伝説 1: 貧しい国は貧しいままの運命にある

そんなことは全くない。所得をはじめ社会福祉を測る指標は、ほとんど至る所で向上している。もちろんアフリカでも。

メキシコシティを例にとってみよう。1987 年に私たちが初めて訪れたとき、ほとんどの家には水道水が無かったし、いっぱいにした水おけを徒歩で運んでいる人をたくさん見た。アフリカの田舎のようだった。メキシコシティにある Microsoft のオフィスの責任者は、子供たちをアメリカに連れて行って健康診断を受けさせ、スモッグが悪影響を与えていないことを確認していた。

今では、メキシコシティはびっくりするくらい変わっていて、自慢できるほどの高層ビル、きれいな空気、新しい道路と近代的な橋がある。貧しい地域は今でもあるが、もし今メキシコシティに行ったら「ほとんどの人が中流階級になってる。これは奇跡だ」と思うだろう。似たような変化は、ナイロビでも、ニューデリーでも、上海でも、世界中の多くの都市で見られる。

私たちが生きている間に、世界の貧困の様子は完全に書き変わった。トルコとチリの一人当たり所得は、1960 年代のアメリカ並みになった。マレーシアもそのレベルに近づいている。ガボンもそうだ。1960 年以来、中国の一人当たり実質所得(= インフレ調整後)は 8 倍に上がった。インドでは 4 倍だし、ブラジルではほぼ 5 倍だ。あの小さなボツワナでは、鉱物資源を賢く管理することで、30 倍になった。50 年前にはほとんど存在しなかった中間所得国家という新しい階級に、今では世界人口の半分が属している。

そしてもちろん、これはアフリカにだって当てはまる。アフリカにおける一人当たり所得は、1998 年と比較して 2/3 上昇した。$1,300 より少し多いぐらいの額から、ほぼ $2,200 になった。過去 5 年間に最も経済が発展した 10 の国家のうち 7 つはアフリカにある。

私たちの予測はこうだ。2035 年までに、世界から貧困国家はほぼ無くなる。もちろん、戦争、政治の現実(例えば北朝鮮)、地理的な条件(中央アフリカの陸地に囲まれた国など)によって停滞する国はあるだろう。しかし、南アメリカ、アジア、中央アメリカ(ハイチ以外、恐らく)の国々、そしてアフリカの沿岸諸国は、中間所得国家になるだろう。70% 以上の国では一人当たり所得が、今日の中国より高くなるだろう。

都市伝説 2: 海外援助は壮大な無駄だ

実際のところ、海外援助は驚異的な投資だ。海外援助はただ単に命を救っているだけではない。持続可能で長期的な経済発展のための基礎を作っているのだ。

多くの人が、海外援助は富裕国の予算の大部分を占めていると考えている。国家予算のどれだけが援助に使われているか、と調査会社がアメリカ人に聞いたら、よくある答えは「25%」だ。でも実際には 1% 未満なのだ(世界で最も寛大な国であるノルウェーでも援助額は 3% 以下だ)。アメリカ政府は、海外の保険・衛生のための援助の 2 倍以上の額を農家の補助金に使っているし、60 倍以上の額を軍事に費やしている。

海外援助に関してよく聞く苦情は、援助額のいくらかが腐敗に繋がっている、というものだ。そういうお金も確かにある。しかし、「援助は独裁者が新しい宮殿を建てるために使われている」というような恐ろしい話は、冷戦時代に、人々の生活を向上させるためではなく、同盟を組むために海外援助が流用されていた時代に起こったことだ。

今では問題は遥かに小さい。例えば、政府の役人が行ってもいない出張費用を着服する、というような小さな腐敗は、海外援助に対する税金のような非効率さでしかない。非効率さは減らさなくてはならない。でも、それを言い出したら、どんな政府の計画にも、ビジネスにも非効率な部分はある。海外援助だけは非効率性を無くすというのは不可能だ。小さな腐敗が命を救う費用の 2% に達すると仮定しよう。腐敗は減らすべきだ。でも減らせないからといって、命を救う努力を止めるべきなのだろうか?

1 ドルでも腐敗に使われるなら海外援助は停止するべきだ、という主張をする人はたくさんいる。しかし、イリノイ州では過去 7 人の州知事のうち 4 人が収賄で有罪判決を受けたが、イリノイの学校を停止しようとか、ハイウェイを閉じようといった主張は聞いたことがない。

援助をしても対象国が他人の寛大さに頼りつづけるだけだ、という批判も聞く。この主張は、自給自足になろうと未だに奮闘しているとても難しいケースだけを取り上げている。ざっと挙げるだけでも、海外援助を過去に受けていて、その後成長したために今ではほとんど援助を受けていない国はこれだけある。ブラジル、メキシコ、チリ、コスタリカ、ペルー、タイ、モーリシャス、ボツワナ、モロッコ、シンガポール、マレーシア。

援助は、生活水準、農業、インフラの向上を加速し、これらは長期的な経済発展と関連がある。1960 年に産まれた乳児は、18% が 5 才までに死亡していた。今日では、5% 以下だ。2035 年には 1.6% になるだろう。75 年にわたって人類の福祉をこれほどまでに向上させたものは、海外援助の他には考えつかない。無駄だって? とんでもない。

都市伝説 3: 命を救うことは人口過剰に繋がる

少なくとも 1798 年のトーマス マルサス以来、食料供給が人口増加に追いつかない、という世界滅亡のシナリオを人々は恐れている。この種の考えはたくさんのトラブルを産んできた。世界人口が増えすぎると不安に思うと、人口を増やしている人々への気遣いを忘れがちになる。これは危険だ。

将来飢えさせるぐらいなら子供のうちに死んだ方がましだという考えは、残酷なだけではなく、ありがたいことに間違っているのだ。

直感に反するかもしれないが、死亡率が高い国は、人口増加が世界的に速い国でもある。そういう国では、女性が子供を多く産もうとするからというのが理由だ。

多くの子供が生存するようになれば、両親は小さな家族を望むようになる。タイを見てみよう。1960 年前後に乳幼児死亡率が下がり始めた。そして 1970 年に政府が家族計画プログラムを強化して以降、出生率も下がり始めた。ほんの 20 年の間に、タイの女性の平均的な子供の数は 6 人から 2 人まで下がった。今では、タイの乳幼児死亡率はアメリカと同じぐらい低く、タイの女性は平均して 1.6 人の子供を産む。死亡率がまず下がり、それから出生率が下がる、というこのパターンは世界各地に当てはまる。

命を救うことは人口過剰には繋がらない。全く逆だ。最低限の健康水準、そこそこの豊かさ、基本的な平等権、避妊薬、こういったものを手に入れられる社会を作ることこそが、持続可能な世界を作る唯一の道なのだ。



もっと多くの人々、特に政治のリーダーは、これらの都市伝説の裏にある誤解を知らなくてはならない。大切なのは、あなたが見ている問題が個人の問題であれ政府の問題であれ、国際的な健康と開発を促進する努力は、驚くほどのリターンを産むということだ。極度の貧困は例外的なものであって、定められたものではないという世界を作るチャンスが、私たちみんなに与えられているのだ。


-- この記事は、近々送られる、ビル & メリンダ ゲイツ基金(両名が共同議長を務めています)の年間報告書からの編集です。ゲイツ氏はマイクロソフトの取締役会会長です。年間報告書を希望される方は gatesletter.com で登録してください。

3 件のコメント:

  1. すばらしい。翻訳お疲れさまでした。

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    1. あざっす。翻訳大変だけど、楽しいよね。

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    2. さいきんこんなバカでかい翻訳プロジェクトを立ち上げました。なまあたたかく見守っていただければ。。。 (宣伝タイム) http://jats-ug.metasepi.org/

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